syabito’s blog

写人です。走り回ること、山に登ること、写心を撮ることが好きで、人呼んで「鮪」と発します。

親子漫才

ショパンの調べとは程遠いロックな激しい雨音で目が覚めた朝は、寝起きのいい朝です。

カーテンの向こうの水溜りに広がる無数の波紋が、

「今朝は休め」と促しているようです。

二度寝と洒落込んだものの、

微睡みの中、部屋と中央から小鳥が、

「早く起きろ」と喧しく囀り出します。

やがて、開けたカーテンの向こうが白み始めます。

気が付けば、雨は上がり、山並みの上には、まだまだ遠い朝日が反射した雲が、ほんのり頰を染めています。

これからのひと時。

写人が、あなたにお送りする写心の定期便「maguroストリーム」。

皆様のお供を致しますカメラマンは、わたくし、福田正美です。

f:id:syabito:20200110104012j:image

雨は上がったものの、遅い日の出に時間はなくなり、

ルーティーンの腹筋三百回で、まだ眠りの中の体に喝を入れて叩き起こします。

いつものように、ノンアルコールの液体歯磨きでうがいをしてリビングに降りていくと、

トン、トン、トン—。

包丁がまな板を叩く小気味のいい音が聞こえてきます。

扉を開けると、味噌のいい香りが鼻腔をくすぐります。

「起きたんか。余っていた丸餅で雑煮したで」

きっと早起きしたのでしょう。

部屋は程良く暖まっています。

「余ったお汁はもったないで、今夜味噌汁代わりに飲めばいいで、早よ帰ってきね」

「おいおい。まだ、出掛けてもいないのに」

何気ない言葉に苦笑いです。

「こんなことより、昨夜の写心見せて」

「はあ?」

「あれあれ」

と母親はニコニコしながら指を指します。
f:id:syabito:20200110104022j:image

「この部屋にもあるのお」

「ん?」

「ああ。あれかあ」

ブラウン管の中のルーブル美術館モナリザを観て、微笑んでいます。

「おお。横にモナリザの微笑みがおる」

とぼける息子に、

「ほうか」

「否定せんのかあーい」

ひとしきり二人で盛り上がって挙句に、

「もう寝よ」

「寝るんかあーい」

「まだ8時半やし、寝れんて」

「それにしても、えらい色褪せてるなあ」

「あれ、さくらカラーご持ってきたんや」

「???」

どうも、写真屋当時、小西六から貰ったようです。

「数十年前?物持ちいいのお。天然色フイルムって言っていた時やろ」

「百年プリントとも言っていたのお」

数秒前のことは忘れますが、何十年も前のことはよく覚えている母親が、一言。

「まだ50年しか経っていないのに、褪せつんてるのお」

二人で、ひとしきり大爆笑してパチリ。

「また証拠写心か」

「今夜はよう寝れるわの」

天然色だけに、母親の天然ぶりが頭に残って眠れない夜でした。

「ああ。よう寝た」

今朝も天然をぶちかまされました。

 

お送りしましたこの写心が、あなたの心に美しく溶け込みますように。

写人がお届けしました写心の定期便「maguroストリーム」。

皆様のお供を致しましたカメラマンは、わたくし、福田正美でした。