グッと冷え込んだ朝は、
冷たい雨が落ち葉を濡らします。
暫くして、北風が追いやった雲間から、
レースのカーテンをすり抜けて、食卓に強烈な朝日が差し込みます。
しかし、長続きはしません。
やがて、黒い雲の中へと飲み込まれます。
強い雨と風に色づいた葉は力尽き、骨格だけとなった木々が、一層寒さを際立てます。
これからのひと時。
写人が、あなたにお送りします写心の定期便「maguroストリーム」。
皆様のお供を致しますカメラマンは、わたくし、福田正美です。
半世紀を経て、ミッキーからロレックスになりました。
親父が半世紀前に、はめていた形見の腕時計がピッカピカになりました。
ガラス交換、本体とベルトを磨いてヘアラインも入れてもらい、天に召された親父から受け継いではめ続けて22年、今蘇りました。
お揃いで母親にプレゼントしたレディースは、親父の死を見届けるよう静かにに止まりました。
親父が亡くなって1週間目ぐらいに、仕事でヘリコプターに乗り込む時、いきなりバントが切れたことがあります。
何か言いたかったのでしょうか。
親父のロレックスは、今も正確に時を刻みます。
この時計は初期の機械式自動巻きで、はめていないと一日で止まってしまいます。
僕が、がんで倒れて手術と集中治療室から3日後に戻った時、なんと動き続けてくれてました。
何か言いたかったのでしょうか。
そんな形見のロレックス。
親父を身につけてこれからも生き続けます。
そして、
人生を終える時、一緒に旅立つつもりです。
風邪をひいた母親を病院に連れて行き、待合室でこの話をすると、
遠くを見つめて、にっこりほほえみました。
何か言いたかったのでしょうか。
冷たい北風が2人の頬を容赦なく打ちます。
雲間から差し込む光芒が優しく照らします。
お送りしましたこの写心が、あなたの心に美しく溶け込みますように。
写人がお届けしました写心の定期便「maguroストリーム」。
皆様のお供を致しましたカメラマンは、わたくし、福田正美でした。