下弦の月がぼんやりとベールを纏って朧月となっている午前4時、ちょっぴり生暖かい風が頰をくすぐった。いつもなら東の彼方に明けの明星が瞬くはずだが、その姿もない。きっと薄雲には程遠い雲がかかっているのだろうが、空はまだ闇の中で窺い知ることはできない。
写人が、あなたにお送りします写心の定期便「maguroストリーム」。 皆様のお供をいたしますカメラマンは、わたくし、福田正美です。
今夜は豆乳鍋にしようと買い物に出たついでにいつもの喫茶店に足を伸ばした。
胸に付けた初心者マークが初々しいアルバイトさんだろうか。どうやら研修中の様子。
マニュアル通りの応対なのだろうが、言葉にリズムがない。動作に過敏さがなく無表情で笑顔もない。マイペースと言えばそれまでだが、
「それではダメだよ」
老の戯言が頭の中をグルングルン回っている。
兎に角歯痒いのである。
いつものようにヘッドホンをつける。喧騒を遮るためだ。流れてきた曲は松田聖子。何故だかデビュー当時と現在のアルバムがヘビーローテーションしている。
ふと気が付いた。
同じ曲でも、昔と今では全く違うんだなと。〝聖子ちゃん〟は、アップテンポでもスローバラードでも五線譜の上で音符が飛び跳ねているようだ。〝聖子さん〟は、どちらの曲も五線譜の上を音符がベターと滑る感じ。
もちろん、どちらが良いとか悪いとかではない。年を重ねてと落ち着きなのだろう。どちらも松田聖子なのだ。
話を元に戻そう。
そのアルバイトちゃん、年の頃はまだ10代であろう。
「なんでもっと会話が跳ねないんだろう」
今の若者らしいと言えばそうなのか。いやそんなことはない。友人同士ならもっとキャピキャピのはずだ。
そんなことに小一時間。まったりとした土曜日の朝になるはずだったが…。
写心は5年前の今日。福井がディズニーになった日です。
お送りしましたこの写心が、あなたの心に美しく溶け込みますように。 写人がお届けしました写心の定期便「maguroストリーム」。 皆様のお供をいたしましたカメラマンは、わたくし、福田正美でした。