昨夜除けて出来た細い玄関に、新たな雪はなく、ホッとする早朝というよりは深夜は、
唸りを上げる除雪車のエンジン音で目が覚めます。
雲の切れ間に一瞬輝いた星が、あっという間に飲み込まれて冷たい雨が頬に当たります。
雪を掻かなくて済むという安堵に、疲れ果てた身体中や痛みが消えてゆきます。
写人が、あなたにお送りします写心の定期便「maguroストリーム」。
皆様のお供をいたしますカメラマンは、わたくし、福田正美です。
午前2時。
「来てくれたッー!」
陸の孤島と化していて、日曜日、車が出せずに12キロ、2時間45分歩いて出勤していたのです。
翌日は、
「もう嫌や」
意を決して、一か八かの賭けで車を出しました。
「今朝はどうなることやら。また、ヒヤヒヤしながら悪路と闘うのか」
覚悟してい
「おーーー。神様」
ガチガチに凍って踏み固められた除雪車の落とし物は、スコップ2本がお釈迦になる難敵です。
もうさじ、いや、スコップを投げました。
悪戦苦闘する姿を見てくれたのでしょう。
除雪車が、さり気なく後ろからコースを少し逸れて、ガガガァーッ!
何事もなかったように、去っていきました。
「おー、ありがとうございます。ありがとうございます。」
何度も何度も頭を下げました。
そして涙が出ました。嬉しくて泣けたのはいつ以来だろう。
決して寒さの涙ではない証に、頰を伝うそれはあたたかったです。
こんなさり気ない優しさは久しぶりです。
凍てつく寒さを忘れてしまうほどあたたかい早朝でした。
実は、徒歩出勤した日曜日の夜、電車、バス、タクシーは全て止まってします。
ホテルもどこも満室です。徒歩で帰宅かと腹を括ったとき、
客を乗せた一台のタクシーが福井駅に滑り込みました。
天井に「小松」の文字。
もしかして。
「武生からですか?」
「そうですよ。今から帰ります」
「おーーーっ!途中、鯖江で下ろしてくださいッ!」
「いいですよ」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
積雪が福井の半分の越前市はタクシーが動いているそうです。
自宅前はこの通り。
お風呂に浸かってから、午前6時過ぎ、嘘のようにスムーズに車を出しました。
福井市内までの道中、悪路と渋滞がありましたが、ほぼ予定通り2時間半で無事到着。
「ん?徒歩と同じじゃん」
思わず苦笑いした朝でした。
一か八かの賭けに出た代償は大きかったですが、身も心も疲れ果てた大雪ですが、疲れを癒してくれる嬉しいことが2日連続でありました。
お送りしましたこの写心が、あなたの心に美しく溶け込みますように。
写人がお届けしました写心の定期便「maguroストリーム」。
皆様のお供をいたしましたカメラマンは、わたくし、福田正美でした。