細い月が東の彼方から姿を現します。
山並み上空の空は、
朝日がもうそこまで迫っているのか、
暁のグラデーションに染まっています。
写人が、あなたにお送りします写心の定期便「maguroストリーム」。
皆様のお供をいたしますカメラマンは、わたくし、福田正美です。
暁の空に昇る三日月は、妖艶な輝きを放ちながら、文殊の山並みのウェーブに見えたり隠れたりを繰り返します。
やがて猛追する朝日にかき消され、気が付けば強烈な光に見えなくなります。
そんな宇宙の神秘を感じながらのルーティーンは、
季節外れの冷え込みに、体がびっくりしてオーバーペース気味の10キロでした。
東京オリンピック代表決定戦となる日本選手権で50、100メートルバタフライ、50、100メートル自由形で四冠を達成。400メドレーリレーと400メートルリレーの代表となりました。
決勝レースに臨む池江璃花子選手は、
「ただいま」
と、囁きながら入場。
唇がそう動いたシーンが映像に流れた時、涙が込み上げました。
この2年間、想像を絶する闘いだったと思います。
病気との闘い。
そして、
「なぜ、こんなことが出来ないんだ」
心との闘い。
「努力は必ず報われるんだ」
出場した4種目全てで優勝してレースを終えて、
「自分を褒めてあげたい」
と涙を流した池江璃花子選手。
とても綺麗な涙でした。
今大会の池江璃花子選手の姿を見ていると、
悲壮感は微塵もありません。
それどころか、常に笑顔で、
まるで泳げることを楽しんでいるようでした。
それが池江璃花子選手の強さだと思います。
単独種目での金メダルはパリに取っておきましょう。
4年後、表彰台の真ん中でとびっきりの笑顔を見せる姿が瞼の奥に広がっています。
お送りしましたこの写心が、あなたの心に美しく溶け込みますように。
写人がお届けしました写心の定期便「maguroストリーム」。
皆様のお供をいたしましたカメラマンは、わたくし、福田正美でした。